第5回 スイスの緑化事情
緑化は自然の再現という考え方-スイス
日本人が思い浮かべるスイスのイメージ・・・アルプスの少女ハイジ、アルプスの澄み切った空、高原。スイス銀行。時計・医薬品。食べ物ではチーズ。中立国。概ねこのようなイメージを持たれると思います。
世界の高峰アルプス山脈のふもとに位置する国と、アルプスの少女ハイジというイメージからスイスの気候はとても過ごしやすく、冬は寒いと言う方が大半でしょう。しかしスイスにも夏はやってきます。スイスの夏?そりゃ高原のイメージですから涼しいのでは無い?とも感じると思います。
確かにスイスの夏場の平均気温は30℃にも満たないところが多いのも事実ですが、30℃を超える街もあり、その要因の一つとして考えられているのが、ヒートアイランド現象です。スイスといえども都市部はかなり開発されており、東京のような高層ビルが建ち並ぶとまでは行かないものの、緑地が少ないことで都市部の温度が上昇しつつあります。
ヒートアイランド減少の緩和に屋上緑化を導入することは、日本でも盛んになってきています。大日化成の薄層緑化システムVUS-500もその一端を担わせていただいております。
スイスの街で実際にヒートアイランド現象を緩和して、1〜2度夏場の平均気温が下がったという街も出ているようです。
スイスでは1,970年代から屋上緑化に取り組んできました。そのきっかけは冬場の断熱作用が主でした。アルプスのお膝元やはり冬の寒さは厳しいので、エコロジーが盛んになってきた70年代から取り入れてきたようです。その他にも、薄い流出量の減少目的もあるようです。
また90年代後半からは屋上緑化に補助金もでるようになり、自治体を上げて普及を促進してきています。
日本と違い、夏の暑さの緩和よりも、冬の断熱作用が目的で始まったと言うことは興味深いところです。日本では屋上緑化は先のヒートアイランド現象の緩和ということで暑いときに効果がある。と考えられていますから、冬場でも屋上緑化を促進する動きもあって良いのではないかと考えます。ただ冬場は葉が枯れるという1年草ではあまり意味が無いかもしれませんので、多年草での促進は必須でしょう。
バーゼル市では、建築基準法もみなおされて、新築の陸屋根に対しては、屋上緑化が義務づけられ現在に至ります。
またもう一点興味深いところとして、屋上緑化が、絶滅危惧種を福も植物の生育場所になる事が示されて、ヒートアイランド現象の緩和・エコロジーや雨水流出の効果より、生物多様性を高めることが屋上緑化の中心となってきました。
緑化を行う品種が多様化するような工夫も取り入れられて、街の整備に関しても緑化を意識した整備になっています。自然土壌自生種をもちいて、雑草の手入れもせず灌水もしない。屋上緑化では陸屋根ですので平坦なものになるので高低差をもうけることで丘陵を再現し、より自然に近い生育を行ってきています。
つまり、緑化は自然の再現という考え方ですね。
自然が再現できれば、気候も安定してきてヒートアイランド現象の緩和もおこなえ、生物にもやさしい。そして人にも優しい緑化環境。世界のお手本のような緑化です。
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